昨日晴れ、最高気温31度、今日は最高気温21度で一日静かな雨
Middlesexは主人公が子供の頃、家族ともども引っ越したデトロイトにある自宅の通りの名前。そして主人公のカルは男女両性を備えている。もし、これが日本の小説だと、社会状況と並行して、カルの肉体の変遷と精神心理を功名に表現し、カルの1世代の話となると予想される。でも、この小説は、カルの祖父母の第一次世界大戦中のギリシアの村の状況、命からがらの出国、そして新大陸アメリカデトロイトでの祖父母、両親、そしてカル、のギリシア移民三世代にわたる話となる。カルの祖父母と両親が、アメリカで礎を築いていく話は全ての移民に当てはまり、移民国家そして新大陸アメリカならではのものと思われおもしろい。また、デトロイトという自動車産業と人種問題の街の様子にも興味を持たされた。
映画にたとえると、ゴッドファーザーの構成でいけるかもしれない。パート1は、カルの女の子から男の子となる17歳までの話(アルパチーノ扮するマイケルがゴッドファーザーとなるまでの話)。パート2は、祖父母がギリシアからアメリカへ移民しアメリカでの基礎を築く時代(ゴッドファーザーのアメリカ移住とマイケルが生まれるまでの話)。二世代あとにカルが男女両性を備えて生まれてくる鍵がこの時にある。パート3は、現在の41歳のカルの話。つまり17歳以降の話。小説では片鱗しか語られていない。
補足だけど、日本の小説は1世代の話、もしくは今17歳の話、はたまたこの1週間の話といったものが多いように思う。村上春樹しかり、川上弘美しかり、小川洋子しかり、2005年あたりに読んだ芥川賞の「蛇にピアス」「蹴りたい背中」等々。これはこれで、かなりおもしろいけれど、こうした背後には、既に定着している核家族化、そして最近増えていると感じる単身赴任による家族分散の生活があるのではないかと思われる。今、日本に出稼ぎできて結婚等で日本に定着した家族の1、2世代後の人たちの書く小説が現れたらおもしろいかもしれない。
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